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2016.03.11
ズバッと一言
「やっている」ということより「できている」
当社の施設では口腔ケアに力を入れています。当然高齢者の死亡原因っで最も多いのは誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎について病院も介護施設も重要なのは「誤嚥性肺炎を起こさせないこと」です。癌や心疾患、脳血管疾患など死亡原因の多い疾患はそのほとんどが”今”予防ができません。または予防しにくい疾患です。生活習慣病がベースとなっていることが多く、しいて言えば生活習慣病というよりそれまでの生活習慣が元で発症している疾患や癌のように不可逆的要素の多い疾患であることがわかります。
それに比べ誤嚥性肺炎は突発性の高い疾患であり、脳血管障害による後遺症のため誤嚥するケースもありますが唯一”今”予防することのできる疾患であると考えられます。特に口腔ケアは発熱率、肺炎発症率、死亡率を低下させることができることはこれまでの研究からも理論付けられています。
ではなぜ肺炎での死亡率がいまだに多いのか。これは高齢者の数が増えているということも一理あるかもしれませんが、予防が可能であるということを考えると全く根拠が見出せません。ただ単純に予防ができていないということではないでしょうか。「口腔ケアをしていないところはありません」この時代にそれはないでしょう。しかし、しているということとできているということは違ってきます。私も現場で働いてきた身ですのであまり直視したくないことではありますが「やっている」ということに満足をして「できている」ということを評価していないのではないかと思います。そもそも口腔ケアの目的はと考えると”日常生活援助”だからではありません。”ケア”としてやることになっているからでもありません。”誤嚥性肺炎を起こさせない”ことが最大の目的であると私は考えています。
これは病院であっても介護施設であっても同じことです。あくまで疾患の予防の一つです。口腔ケアは他にも歯肉炎の予防などさまざまな効果や目的は存在します。しかし、誤嚥性肺炎は今や素人でも知っている高齢者の死亡原因です。中にはそんな長生きしてもみたいなアホなこという人もいますが、生きている人間で死んでいい人間なんて一人もいません。高齢者も同様に元気でいなくてはいけない存在です。
ケアはまず目的達成を重視して考えなければいけません。くどいようですが「やっている」ということより「できている」ということに重視しなくてはいけません。これはシーツ交換などほかのケアにも共通します。「できている」ということを求めていくと自ずと結果は出てきます。当然のことながら結果を求めない仕事に結果はついてきません。私が思うことの一つに職員教育がいい例です。どういう職員レベルを求めるのか明確でない新人教育は失敗します。今の介護業界では業務本位なところが多いので新入職員が入ってくると”あいつは使える””あいつは使えない”とくだらない評価から始まる傾向があります。私はいつもそういった介護職員に言うのが「最初はあなたも使えない人だった」「今も私から言ったら使えない」とはっきり言います。育つ前に潰す。マンパワー不足を自らつくるマンパワー不足の自給自足です。
誤嚥性肺炎と口腔ケアの話に戻りますが、誤嚥性肺炎を起こさないための口腔ケアという風に考えると「じゃどうすれば」ということに目が行きます。難しく考える必要はありません。歯磨きをすればいいのです。自分たちがやっている歯磨きと同等のケアを提供すればいいだけです。基本ブラッシングと洗浄です。便利グッズはたくさんありますがあくまで補助具でしかありません。そして私が一番思うことは感染予防の基本は洗浄です。洗浄のない口腔ケアは口腔内に細菌を散らせて終わるだけですから危険極まりない行為です。たしかに障害がある人達ですからその手技は難しいものがありますが、それをやってのけるのが専門職です。とにかくやった本人が胸を張ってきれいにできましたと言える「きれいな口腔内」にすればいいのです。私がケアの中で一番こだわりたい部分です。
抗生剤がどうとか薬がどうとか病院受診はどうするとか考える前にちゃんとしたケアがなされているかを考えることが重要です。高齢者が病気になるのは年だからではありません。中にはあるかもしれませんが、まずは病気にしないことが大切であると私は考えています。