名古屋市で住宅型有料老人ホーム、訪問介護、訪問看護、介護職員初任者研修や喀痰吸引等研修(一号研修)などの研修事業まで行なっているH&Nホールディングス

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2016.02.17

ズバッと一言

「ありがとう」

昨日開設当初から入居していた利用者様がお亡くなりになられました。元々意思の疎通はほとんどできない方でしたが寂しさを感じました。介護施設は職員はもとより利用者様が入居していて初めて成り立ちますから大切な仲間の一人です。日々介護職員は一生懸命ケアを行いできることなら利用者様とお別れはしたくないものですが、高齢者を対象とした介護施設では”看取り”は必ず訪れます。

そういった中で私個人も含めて当施設ではエンゼルケアに力を入れています。特にエンゼルメイクは生前の顔色に近づけられるようしっかりと化粧を施します。もちろんケアの前には入浴も行います。死後の乾燥を予防するという目的もありますが、単純に日本人は風呂に入るという習慣を持っていますから最後にお風呂に入って頂くというごく自然なケアとして行います。

私の考えとしてエンゼルケアは「最後にできるお世話」だと思っています。これまで入居して頂いた利用者様へ感謝の気持ちも含めて精一杯できることをするということが大切です。他の利用者様や業務がありますからその場で悲しみに浸っていることはできません。冷たいようですが常に次のことを考えなくてはいけません。だからこそその時を精一杯お世話することが重要であると考えています。

私がエンゼルケアにこだわるようになったきっかけは以前住んでいた近所の床屋さんのおばちゃんがきっかけでした。私が入院している病院へ入院していたのです。お互い顔を合わせたときにびっくりしました。当然長く通っていたところでしたので親しくしていた方でした。ですが残念ながら病名は癌でした。それも末期の癌でしたから最悪です。入院中おじちゃんに髪を切ってもらっているときに「病気どうだろ。良くないことはわかるけど望みはあるのかな?」と言われたとき、言葉に詰まり「そっか」「あんたでもそう思うか」と言われ泣きそうになったことを覚えています。

ついにおばちゃんがなくなる時が来ました。不思議とその日は受け持ちでした。医療職として感情に左右されてはいけないことはわかっていますが、そうもいきません。亡くなった顔をみていつも元気に床屋で働いていたおばちゃんの顔が目に浮かびます。おじちゃんが来るまでに少しでも元気だったおばちゃんの顔に近づけようと化粧道具を手に取りました。道具が足りなくて同僚の看護師さんに借りもしました。おじちゃんが来て顔を見たときに「こんなにきれいにしてくれてありがとう」と言われました。他の看護師さんも驚いたほどでした。それまで軽く化粧をして死後の処置としてしていたものの価値観が大きく変わる瞬間でした。

これまでたくさんの方のエンゼルケアを行ってきましたが、悲しい場面であるにも関わらず涙を流しながら笑顔になるご家族様も見えました。最後の最後の場面まで精一杯お世話をした結果頂ける「ありがとう」の言葉にはとても大きな感謝の気持ちが込められているように思います。一番悲しい場面なのですから。

そういったことがきっかけでこだわるようになったエンゼルケアですが、当初はまだそれほど着目されていませんでした。当然勉強会もありません。ですが、現在では勉強会も豊富にあり当施設でも介護職員の研修としても行われています。名東の施設今年で丸3年になろうとしています。開設当初は見学をしているだけで手を出せなかった職員が今では指導者となり教えながら行っていました。かなり上手なレベルでいい仕事をしていました。おばちゃんをきっかけに始めたエンゼルケアが今は後輩たちが繋ぎ、学び継続して行っている姿を見たときに後輩たちの成長を感じ取れました。意地悪な言い方をすると「もう少し教えてやろうかな」と久しぶりに看護師として指導者として思った瞬間でした。骨のあるやつは時間がかかっても育ちます。厳しさの中に身を置かなければ成長はしません。時には職員同士言い合うことも必要です。そんな骨のある介護職員にまた育ってきたのかなとうれしく思いました。エンゼルケアのきっかけを私に作ってくれた”おばちゃん”に今一度「ありがとう」と言いたいです。